コンドーム伝道師が、「SKYN」を使って教える「エイズを通じて”性”と”生”を考える講演会」~前編~

コンドーム伝道師が、「SKYN」を使って教える「エイズを通じて”性”と”生”を考える講演会」~前編~

目次
最初に触るコンドームが「SKYN」ってすごくないですか?
全国の高校、中学の保健体育科教員は、全員「コンドーム伝道師」

滋賀県在住の元県立高校教諭、清水美春さん。2010年から2年間、青年海外協力隊として、ケニアでエイズ対策隊員の活動をされた経歴をお持ちです。帰国後、滋賀県内の中学、高校を中心に「エイズを通じて”性”と”生”を考える講演会」を開催している清水さんは、不二ラテックスのコンドームを使い、実際に生徒たちに触れさせながらコンドームの大切さを伝えています。

最初に触るコンドームが「SKYN」ってすごくないですか?

清水先生が開催されている「エイズを通じて”性”と”生”を考える講演会」では、実際に高校生たちがコンドームに触れる時間があると聞きました。その中で、不二ラテックスのコンドームも使っていただいているんですよね?

icon 講演会用に、不二ラテックスさんからコンドームのご提供いただいています。つい最近も、180人の生徒さんたちのペアワークに「SKYN」を使わせていただきました。初めて触るコンドームが「SKYN」って、すごくないですか?(笑)。

最初に触るコンドームにしては、かなり質の高いものから知ってしまうんですね (笑)。講演会で、生徒さんたちはどのようにコンドームに触れるのでしょうか。

icon 講演会では、生徒たちにペアを組んでもらいます。じゃんけんをして負けた人にピースをしてもらい、勝った人は、そのピースにした指をペニスと仮定してコンドームを付けてもらうんです。指に付けたあとに膨らませたりもします。生徒たちには「SKYN」のイソプレンラバーという素材について「やわらかくて素肌に近い感触を確かめてみよう」と確認させたりします。不二ラテックスさんの商品を講演会で使うと、初めて触るコンドームが「SKYN」という時代が来たんだなと思うと感慨深いです。

生徒さんたちは講演会で、コンドームに3つの素材があることや、色や形が違うということも体験できるんですね。

icon その講演会では、「SKYN」に続いて同じく不二ラテックス社の天然ゴムラテックス製コンドームを配布しました。それは、ごつくて黒いコンドームだったので、開封するなり生徒たちはその色に大騒ぎです(笑)。天然ゴムラテックス製コンドームは、ゴムゴムしいですよね。色も厚みも感触も違うコンドームを実際に触って比較することにより、生徒たちには、コンドームには素材が違うものがあるという印象付けができたと思います。
また、講演会の前に、学校の先生方が保護者宛の手紙の中で、天然ゴムラテックスアレルギーがある子がいないかを確認してくださっていて、アレルギーがある子には、ポリウレタンやポリイソプレンのもので対応したこともあります。

全国の高校、中学の保健体育科教員は、全員「コンドーム伝道師」

清水先生を「コンドームの伝道師」と紹介されている記事を拝見しました。清水先生が、コンドーム伝道師として活動するようになったきっかけを教えてください。

icon 実は、「コンドーム伝道師」というのは、周りから言われているだけで、私自身は名乗ったことはないんです(笑)。そう呼ばれるようになったきっかけは、「エイズを通じて”性”と”生”を考える講演会」を取材してくださった男性記者の方が、私のことを「コンドーム伝道師」と記事で紹介されたからなんです。最初は驚きましたが、このキャッチコピーのおかげで、これまで無関心だった方たちも記事を見てくれたことが分かったので、ものすごくインパクトのあるワードだと感じました。私自身は、2002年から高校保健体育の教員として教科書に記載されているコンドームのことを教えてきていますが、それは何も特別なことではありません。私が「コンドーム伝道師」なのであれば、全国の高校、中学の保健体育科教員は全員「コンドーム伝道師」だと思っています。

清水先生が保健体育の教諭として働きはじめた2002年の性教育と、2021年現在の性教育にはどのような変化がありますか?

icon この20年、現場は何も変わっていません。昔から、一生懸命伝えている人もいるし、私より若い先生でも性教育をタブー視している人もいます。性教育の変化という点で言うと、ほとんどの時間を学校の中で過ごす教員には、社会の流れが見えていないというのが大きいです。世の中では、性教育に追い風が吹いていると言われて、朝の情報番組やNHKなどで性教育について取り上げられていても、先生方は目の前にいる生徒たちのことに精一杯で、世間の流れを見る余裕がないことも多いと感じています。SNSをやっていない先生のほうが圧倒的に多いですからね。

そのような環境で、清水先生が世の中の流れを掴んでいるのはなぜですか?

icon ケニアに行くまでの8年間、教科で保健を教えてきましたが、土日は部活動の顧問でバスケをやっていたし、当時は学校以外に社会と接する機会を持つことはなく、私も世の中の流れというものを全くつかめていなかったと思います。2010年に、青年海外協力隊に参加したことで国籍も職種も多様な人たちとの繋がりができました。そこで初めて、「性教育バッシング」を耳にした時は正直とても驚きました。教室の中では、常に目の前の生徒にとって必要だと思う授業を実践してきましたが、外部からの影響を感じたことはありませんでした。
そう考えると、私自身のスタンスはこの20年変わっていないのですが、視点は大きく変わりました。2002年当時は、教科担当として試行錯誤しながら情報を伝えていましたが、今は、ケニアでの活動を交えたり、世の中の流れを取り入れたりして、生徒自身に考えてもらうことに重点を置いているので、伝えていることの本質は変わらないけど、自分の中で多角的になったと思います。

「エイズを通じて”性”と”生”を考える講演会」は、ケニアで過ごされた2年間があったからこその活動ですよね。その講演を通じて、どのような性教育をしていきたいと考えられたのでしょうか。

icon 私は、性というものは教育できるものではないと思っているんです。教育できたと思った時点で、ものすごい間違いが起こっていると思うし、コントロールしきれないという前提で情報を伝えています。だから私は、「コンドームを付けなさい」とは言いません。「こういう使い方をしますよ」と教えたあとに、「使うか使わないかはあなた次第」と、決定権のバトンを生徒たち自身に渡して終わります。私は、全ての人の性が尊重されることが当たり前の社会になって、「性教育」という言葉自体、なくなればいいなと思っているくらいなので。

講演会で、実際にコンドームに触れる体験をさせるということについて、清水先生の考えを教えてください。

icon コンドームの写真については、性感染症や家族計画の部分で教科書に出てきます。でも、それだけでは必要な知識は子どもたちにインプットされません。“習うより触って慣れようコンドーム”です。触ってみることによって、今まで自分の性や身体に関して他人事だった生徒たちにも、当事者意識が生まれます。そのきっかけを作れるのがこの体験です。

高校生へコンドームの講習会を行ったとき、子どもたちの関心度の高さや反応はどのようなものですか?

icon どの学校でも、最初はエロいイメージしかないコンドームが登場するだけで関心度は高まります。もちろん、違和感や嫌悪感を抱く生徒もいるし、まわりの友達が楽しんで触っていることを不思議に感じる生徒もいます。どんな感じ方をしてもいいんです。何が影響して、その価値観が生まれたんだろうと考えさせることもすごく面白いです。
生徒たちにコンドームを配るのは先生にお願いしています。そうすると、今からやることは許容されているという安心感を生徒たちに与える効果も期待できます。講演会の開始前と終了後では、生徒たちのコンドームへの印象は大きく変化しています。生徒たちが講演会の感想を書く頃には、簡単に“コンドーム”という言葉が言えたり、書けたりするくらいハードルが下がり、それと同時に校内で性の悩みを相談できる雰囲気も生まれています。中には、ファンクラブに入りたいと手紙を書いてくれる生徒も現れるくらいです。(笑)

実際に、コンドームを触りながら正しい使い方、素材の違いについて10代のうちに説明を受ける経験ができる生徒たちは、とても恵まれた環境にいると感じます。次回は、清水先生が考える、「気持ちいいセックス、人間らしいセックス」についてのお話です。

(監修者:埼玉医科大学産婦人科医師 高橋幸子)
(取材・文:上原かほり)

後編はこちら

清水美春さんプロフィール

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滋賀県生まれ。大学卒業後、滋賀県立高校の保健体育科教諭として採用され、伝統的進学校、夜間定時制高校、滋賀県教育委員会事務局、滋賀県文化スポーツ局、青年海外協力隊など19年間、多岐に渡る分野で経験を重ねる。協力隊時代は、ケニアの地方病院内でHIV/AIDS対策に2年間従事し、現地40校2,000名以上の中高生にエイズ予防講座を届けた。帰国後もライフワークとして性教育・人権教育・国際理解などのテーマで中高生や教職員への講演活動をおこなう。滋賀県教育委員会 性に関する指導部会委員(2014-16年度)、思春期保健相談士。令和3年3月に退職し、現在は立命館大学大学院 先端総合学術研究科に所属。滋賀県思春期教育研究会理事。