3つの素材で“利きコンドーム”!?マンネリ、セックスレス解消にも役立つ、コンドームが持つ力
コンドームソムリエAiさんが、定期的に開催している「コンドーム試触会」。さまざまな年代の方が参加するする試触会では、数種類のコンドームを触ったり、膨らませたりしながら、Aiさんがコンドームを通じて生まれるコミュニケーションについて語ります。
コンドームには3つの素材がある
さて、前回お話に出た、Aiさんが開催している「コンドーム試触会」について聞かせてください。
コンドーム試触会というイベントを定期的に開催しています。今はコロナ禍ということもあり、オンライン配信に代えて開催しています。コンドーム試触会では、コンドームの使い方や選び方、コンドームを実際に膨らませたりしてもらいながら、コンドームの紹介をします。コロナ前は5〜6人の小グループでコンドームを一つずつ開封してコンドームの触り比べをしてもらいます。オンラインイベントにしてからは、参加者の方に数種類のコンドームや潤滑ゼリーを事前にお土産として送って、各自で実物を確認してもらいながら参加してもらっています。
1回の試触会で、いろんな種類のコンドームに触れることができるんですね!
毎回、「コンドームってこんなに種類があるの?」と驚かれますが、今、日本には約120種類のコンドームがあるんです。参加者の方の声を聴いていると、いろんな種類のコンドームを使い分けたことがある人って意外と少ないんですよね。みなさん、めちゃくちゃ少ない選択肢の中でコンドームを使っているんだなと感じます。コンビニだとあっても2,3種類ですもんね。ドラッグストアは種類が豊富ですが、その中から何を基準に選んだらいいのかわからないという人も多いです。なので試触会では、お配りしたコンドームのオススメポイントを紹介するなど、「使ってみたい」と感じてもらえるような構成にしています。
コンドームの良さというのは、どういう点をポイントにしたらいいのでしょうか。やはり薄さですか?
コンドームは薄ければ薄いほうが良いと思っている人が多いのですが、薄さにこだわるのであれば、素材についても知ってほしいと思います。コンドームには3つの素材があります。それぞれの素材に良し悪しがあります。ちなみに、現在日本でこの3つの素材全てのコンドームを製造販売しているのは、不二ラテックスさんだけなんですよね。
素材 | ラテックス (天然ゴム) |
ポリウレタン (合成ゴム) |
イソプレンラバー (合成ゴム) |
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商品 | フジラテ0.03 | フジラテ0.02 | SKYN |
特徴 | スルッと装着! ピタっと密着、きもちいい “着けていないような”自然なフィット感 |
透明感が、きもちいい “着けていないような“驚きの透明感 |
やわらかく包み込む軽い肌触りが特徴のコンドーム |
天然ゴムラテックスアレルギー | あり | なし | なし |
ソムリエさんコメント | サイズ、形、ゼリーなど選択肢が豊富。独特のゴム臭があるため、臭いが苦手という方も。 コンドームの厚さによってはぬくもりを感じにくく、ゴムコンドームをつけている感じがあるものも。 |
熱伝導率が高いので、相手の体温を感じることができるから生感を感じられる。 伸びにくいので、巻きおろしにくく、スムーズに巻き下ろすには練習が必要。 サイズ幅が狭いため、付けられない、痛くて射精に至らないという人も。 付ける人を選ぶコンドーム |
どんな人でも着られるニットのようなコンドーム。 引っ掛かりが少ないので性交痛を感じにくいと女性から人気。 |
例えば、薄いものが良いと思ってポリウレタンのコンドームを使っている人も多いけど、実は伸びにくくて巻き下ろしにくいとか、素材の硬さで性交痛を感じてしまうと悩んでいる人もいます。ポリウレタン製のコンドームとイソプレンラバー製のコンドームは、厚さが数倍違いますが、実は厚めのイソプレンラバーの方が最近は人気だったりするんですよ。コンドームはもう「薄さ」で選ぶんじゃないんです、「素材」なんです。
コンドームにはたくさんの選択肢がある
素材を変えることで、性交痛にも変化があるんですか?
性交痛の原因は様々ですが、その多くは前戯が不十分なことが多いです。また「濡れなかったらどうしよう?」という不安や緊張があると、交感神経が優位になり、さらに濡れにくくなってしまい、悪循環に。痛みのないセックスには、心も体もリラックスできていることが必要です。
性交痛があることをパートナーに言えず我慢している人も多いようです。痛みを軽減するためには、体位を変えたり、ゼリーを使ったりという工夫もできますが、相手にその提案をするのもなかなかハードルが高いですよね。では、どうするか!身近なコンドームから変えてみるんです。
また、コンドームを間に挟んだフィードバックもおすすめしています。「今日のコンドームは痛みが少なくて気持ちよかったから、次もこの系統のコンドームを試してみよう!」みたいなコミュニケーションを、コンドームをきっかけに作ってもらえたらと思っています。せっかく120種類もあるコンドームですから、いろいろな選択肢があるということをもっと知ってもらえたらなと思います。※コンドームやゼリー等を使用しても性交痛が緩和しない場合、婦人科疾患が隠れていることも考えられます。痛みが緩和しない場合には、早めに婦人科を受診しましょう。
コンドームを選択するというのは、その他にどんな効果があるのでしょうか。
例えば、付き合いが長いと、どうしても性生活がマンネリ化しがち。マンネリ打破のためにラブグッズなどのアイテムを使う方もいらっしゃいますが、突然導入するのもハードルが高すぎますよね。そんな方には、まずコンドームを変えてみることをオススメしています。コンドームには特殊なゼリーがついているもの、表面に凹凸のある加工がされているもの、いつもと違う別人感を味わえるような形状のコンドームなどもあります。そういったコンドームを使うことで、マンネリ打破にもつながり、性生活を飽きずに楽しむことができるんです。
コンドームって想像以上に奥が深いアイテムなんですね!
コンドームは単なる避妊具、性感染症予防具というだけに留めておくにはもったいないポテンシャルを秘めていると思うんです。それこそ日本が社会問題として抱えている、セックスレスや少子化という課題も、コンドームが解決してくれるんじゃないかと私は思っています。実際、試触会に参加していただいた方の中には、性交痛に悩んでいた奥さんとの性生活の頻度が、ゼリーたっぷりのコンドームを使うことで飛躍的に増え、その流れで諦めかけていた妊活が再開し、先日、無事に出産しましたといううれしい報告もいただきました。コンドーム変えたら妊娠できたって、不思議なエピソードですよね(笑)
コンドーム選びを前戯にしていこう!
Aiさんのお話を聞いていると、コンドームを使わないという選択はなくなりそうです。
使う、使わないの選択肢ではなく、「今日は、どのコンドーム使う?」という選択肢のほうが良くないですか?毎回「今日はつけてくれるかな?」とモヤモヤするより、ずっと楽しいですよね。大好きなパートナーと使うものだからこそ「2人の推しコン(ドーム)を探そう!」みたいに、2人が楽しく選ぶアイテムにして欲しい。コンドームを一緒に選ぶって、それがもう前戯だと思うんです。なので「コンドーム選びを前戯にしていこうぜ!」と伝えています。だって、そこから楽しむことができない相手となんて、良いセックスなんてできるわけがないですよね。
コンドームについて語り合うことが、良いセックスにつながるということですか?
食べ物とか、旅行の計画とか、パートナーと2人で決めることってよくあるじゃないですか。「どれにする〜?」「私はこれかな〜?あなたはどう?」みたいに、事前に話し合いをすると思うんですよ。でもなぜかコンドームに関しては、男性だけに決定権があるというイメージが強いみたいなんですよね。妊娠はともかく、性感染症のリスクはお互い同じはず。まずは、コンドームというツールを使って、対等なパートナーシップを築けるようになるところからスタートしてもいいんじゃないかなと思います。
3つの素材のコンドームを使って“利きコンドーム”
コンドームを使ったコミュニケーションで、おすすめの方法はありますか?
コンドームを、つけたくないのにつけなくちゃいけないものというイメージじゃなくて、「つけた方が良さそう!面白そう!」などと、ポジティブに捉えてもらえたらと思います。まずは、3つの素材を付け比べして、違いを感じてみてほしいです。(天然ゴムラテックスアレルギーの方は、ラテックス以外の2種類で)例えば「利きコンドーム」みたいに、どの素材のコンドームをつけたと思うか当てさせるのも面白いですよ。異なる素材を試してみて「どれが一番良かった?」なんて話しながら、それぞれの推しコンを見つけて欲しいです。
それくらい濃いコミュニケーションが取れると、セックスに対しての不満が減りそうですね。
将来的には、男女の隔てなく、自分と相手のそれぞれが推しコンドームを3,4種類持って、「今日は、どれ使う?」と選び合ったり、「今日は、あなたの選んだのを使ったから、次は、私のね!」という会話が生まれたりするのがいいなぁと思っています。そういう上手な楽しみ方を若いうちに知っておくことで、セックスレス離婚とか減るんじゃないかなと思うんです。
コンドームを、もっとコミュニケーションツールに
コンドームは、セックスレスで悩む人まで救うんですね! 子どもの性教育だけではなく、コンドームソムリエとして、幅広い年代の方にコンドームとは何かという活動をされていることがよくわかりました。
私は本業が保健室の先生ということもあって、子どもや若い人だけにアプローチしていると思われがちなんですが、実はコンドーム試触会に参加する方の中には、50代や60代の方もいらっしゃるんです。「奥さんがゼリーのお世話になっているけど、ゼリーがたっぷりついたコンドームがあるなんてびっくりした」とか「(閉経しているから)コンドームを使うことはなかったけど、最新のコンドームを使ってみたくて、誘い文句に使っています」という感想をいただいたことがあります。年齢を重ねてもセックスを楽しめるパートナーがいるって素晴らしいことだなと思いました。性って若いうちだけのものではなくて、一生のことなんですよね。
今後、コンドームソムリエとしてどのような活動を続けて行かれる予定ですか?
日本は「セックスレス大国」と言われています。その状況は世界的に見るとかなり深刻なレベル。私はコンドームソムリエとしてコンドームの情報を中心に発信していますが、コンドームをコミュニケーションツールとして使って、性生活力を上げるのに役立ててほしいなと思っているんです。お話してきたように、若いうちからパートナーとコンドームを通したコミュニケーションを取ることを学んでおけば、より良いセックスが、また、自分の要望を伝えたり、シェアしたりできる関係が築いていけると思います。コンドームソムリエをとして、コンドームの持つポテンシャルを発信し続けつつ、性生活におけるQOLの向上を目指していけたらと思っています。
(監修者:埼玉医科大学産婦人科医師 高橋幸子)
(取材・文:上原かほり)