医師インタビュー

「夫婦で協力し合う妊活」

医師インタビュー

今、日本の約3割の夫婦が「不妊」の心配をしたことがあると言われています。

子どものいない夫婦となると、その割合は約半数にもなるそう。

妊娠をするためには「妊活」をするのが当たり前になってきていますが、「不妊」と言ってもその理由は様々。

「子どもを持ちたい」と思った夫婦が、「妊活」をする上で意識するべきことは?

日々の生活の中で、妊娠につながるために夫婦で取り組むべきことは?

「妊活」を意識したときに疑問に感じやすいことを、
ポートサイド女性総合クリニック「ビバリータ」の院長・清水なほみ先生に聞きました。

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「不妊治療」の身体的負担は、
圧倒的に女性の方が多い

子どもがいない約半数の夫婦が、「不妊」について心配したことがあるというのはショッキングな数字だと感じました。この数字は今後も増えていくものなのでしょうか?

不妊に悩んでいる方が増えているというよりは、妊娠を目指す方の年齢が上がってきているので、必然的に自然妊娠をしにくい割合が増えていると言えます。妊娠をするタイミングについては、ご本人のライフプランがあるので一概に若いほうがいいとは言えませんが、医学的な見地では、生物学的な妊娠適齢期というのは25.6歳。すでに日本の平均初婚年齢がそこを超えているのです。

負担

では、「不妊」と診断される定義を教えてください。

1年間、適切な頻度で避妊をせずに夫婦生活を持っても妊娠しない場合、「不妊」という診断となります。これについては、日本産婦人科協会が「不妊症とは?」という定義を設けています。

目安は1年ですが、例えば38歳で妊活を始めた人が、1年待ってもいいかというと、そういうことでもないので、年齢によって区切ったほうがいいとは思います。

「不妊」の原因を男女比で言うと、どのくらいの割合なのでしょうか?

不妊原因の男女比は半々です。原因があるのが女性だけ、男性だけ、男女両方というパターンがあります。男性が原因の不妊は、精子が卵子に到達できる状態にあるかどうかによります。精子がいるか、泳げるか、そもそも性行為ができるかどうかです。でも、女性の不妊原因は複雑なのです。

女性の不妊原因で多いものは何ですか?

排卵障害、月経不順やそもそも排卵していない無排卵の方の割合が多いです。女性の場合は、妊娠する過程のひとつでもうまくいかない部分があるとダメなんです。卵管が詰まっていてはダメだし、卵子がうまくでなくてもダメ……。そもそも卵子の質そのものが落ちていたら受精ができない、着床ができないといったことが起こります。卵子の質に一番影響を与えるのは年齢なので、40代の方の不妊で最も大きい因子「年齢」になります。

不妊治療の場合、身体的負担が多いのは男性ですか? 女性ですか?

身体的負担は圧倒的に女性の方が多いです。例えば体外受精をするなら卵を採るために卵巣に針を刺し、受精卵をチューブで子宮に戻す。それ以外にも、卵を育てるためにクリニックに注射に通うのも女性。

男性の場合、精子を精巣から採って来ないといけない場合は身体的に負担がありますが、基本的には精液が採れれば治療ができるので、治療はどうしても女性の負担が大きくなります。

共に向き合って「妊活」をすることが、
のちの育児にも良い影響を与える

「妊活」をはじめた場合に、しておくと良いことはありますか?

「なぜ妊娠をしたいのか」ということを、夫婦でしっかりと話し合っておくことが大切です。結婚をするタイミングで、子どもを持つか持たないかを話し合う夫婦も多いようなので、「なんのために子どもが欲しいのか」、「何人ほしいのか」などをしっかり共有すること。一方が、「子どもは欲しくなかったのに、協力させられた」という意識を持っていると、夫婦としてもうまくいかないですよね。

協力

「妊活」をする上で、夫婦でしっかり向き合うことが大切なのですね。

「妊活」や「不妊治療」は、どうしても女性の負担が多くなります。そのときに、同じ方向を向き、気持ちを共有し合えていないと、女性は「なんで私ばっかり」という孤独感を持ってしまいます。「妊活」をしても、夫は生活に何の影響もなく過ごすことができます。それを見て、妻が「私だけが負担を強いられている」といった犠牲者のような立場になってしまうと、後々その反動が産後鬱などの形で現れます。妊娠するために、夫婦で力を合わせた、乗り越えたという経験が、子育てにも良い影響を与えるはずです。

2人で妊活に取り組んだという気持ちが支えになるということですね。

「妊活」と言っても特別なことをするわけではなく、適切な頻度で運動をすること、バランスの良い食事と十分な睡眠をとることが重要なのですが、これらの「妊娠をするためにするべきこと」を、夫婦2人で一緒に行うということがとても大切です。例え、行動はともにできなくても、夫側が「自分は関係ない」という意識を持っているかいないかは、とても重要な要素になります。

「妊活」に適した、バランスの良い食事とはどのようなものですか? 

よく「旅館の朝食をイメージしてください」と言うのですが、ご飯を主食にして、汁物と副菜と主菜。お肉、お魚でタンパク質を摂る純和食が理想的です。食事で補えないものは、サプリメントなどから摂取してもいいでしょう。また、タバコとお酒はやめたほうがいいです。

「妊活」を意識した時点で「葉酸」を飲む人も多いと思いますが、摂取方法について教えてください。

厚生労働省は、葉酸を1日400マイクログラム以上、食事以外から摂取することを推奨しています。葉酸は、胎児の神経管閉鎖障害という先天的な神経の異常を予防するために飲む栄養素です。葉酸を食品から摂るだけでは不十分なので、サプリメントで摂取してください。理想的なのは、妊娠する3ヵ月前から妊娠12週まで。でも、妊娠3ヵ月前というのは難しいので、「妊活」を始めたタイミングで葉酸を飲み始めることをお薦めします。

「排卵日予測検査薬」を使って
タイミングを知る

排卵日予測検査薬

「妊活」を始めた夫婦は、妊娠しやすいタイミングを知ることからスタートすると思います。

「妊活」をしている人は毎日基礎体温をつけていると思いますが、実は、体温を毎日つけることがストレスだという方は結構いらっしゃるんです。体温を計るのが嫌という人や、毎日規則的に測れない人は、それができない自分にダメ出しをしてしまうこともあります。特に、2人目以降で、まだ上のお子さんが小さい場合、基礎体温はつけられないものとしているので、クリニックの患者さんでも、上の子がいる場合には「つけなくていいよ」と言っています。

基礎体温から排卵日を見る方法は?

基礎体温を毎日記録していると、高温期に入ったことで、「3日前が排卵日だったのね」ということがわかるんです。つまり、排卵日は振り返ってわかるんです。月経周期が28日周期で規則的な方であれば、3サイクルくらいつけると、低温期から高温期に移行している流れがわかるので、そのときに集中的にタイミングを取れば良いのです。

サイクルが規則的ではない場合や、基礎体温を記録できない人は?

「排卵日予測検査薬」を使うことです。排卵日予測検査薬で陽性がでると、その日タイミングで翌日か翌々日に高温期に入るので、割とピンポイントで排卵日がわかるんです。排卵日予測検査薬の場合、陽性が出た24時間後くらいに排卵が起こるので、一番妊娠しやすいのは排卵日の2日前。つまり、排卵日予測検査薬で陽性が出る前日ということになります。つまり、定期的に使っていると、月経周期の何日目に陽性が出るなということがつかめてくるので、陽性が出やすい日の前日か、前々日からタイミングを取るのがいいのです。

月経周期が規則的か不規則かでも使い方が異なりますが、使い続けることでリズムがわかってきます。